スクライブとは、半導体ウェハをチップ化するための工法です。スクライブは、主にガラス切断に用いられますが、化合物半導体による発光デバイスなどのチップ化において、スクライブは欠かせない技術です。
テクダイヤは、創業当初からスクライブで使用する“ダイヤモンド・スクライバー―”(英語名称; Diamond Scribing Tool)という商品の開発と製造行っています。ダイヤモンド研磨ノウハウあるこの製品は、半導体ウェハを割断するプロセスにおけるカッター(刃物)として、長年販売しています。その実績から “ダイヤモンド・スクライバー”といえばテクダイヤ、を自負するわたしが、今回はスクライブ技術についてまとめてみました。
1)ウェハカットの3つの手法
2)スクライブ技術による基本用語
3)スクライブの原理
4)スクライブに最適な刃物
5)(まとめ)最適なスクライブテクニックのパラメータ
1)ウェハカットの3つの手法
A)ダイシング加工(湿式)
ダイシングは、水をかけながら切断する方式。工法は広く知られおり、応用技術に対して難易度は高くない。しかし、水を嫌う素材(ウェハ)に適用できない。
素材)ガラス・セラミック・ゴム・アクリル・SUS など
B)レーザーダイシング
レーザーによるカットは昨今の技術であり、その分離化されたチップの断面は綺麗である。またプロセス時間が短く、消耗品費用も低く抑えることが可能で、コスト面で有利なプロセス。しかし、熱影響を嫌う素材(ウェハ)に適用ができない。
素材)GaAs・シリコン・アルミナ・水晶・ガラス・SiC など
C)スクライブ(乾式)
スクライブの特徴は、水や熱をかけずに切断できること。ウェハをけがくことで起きるクラックを利用したカット方法。サファイヤやGaNなど硬い素材では、刃物の寿命もダイシングに比べて長寿である。生産ススタート時は手軽なコストとと設備で始められる。ただし量産時でのハンドリングやコストがかかる。
素材)GaAs・GaN・シリコン・ガラス・サファイア など
2)スクライブ技術による基本用語
- スクライビングツール(ダイヤモンドスクライバー)・・・スクライブに使用する工具
- スクライブ方向・・・スクライブに適した順目・逆目
- スクライブライン・・・ウェハ上のパターンとパターンとの間のすきま
- ウェハ(素材)・・・半導体材料を薄く円盤状に加工してできた薄い板のこと
3)スクライブの原理
スクライブにおいて、もっとも誤解されることが、スクライブとはウェハを実際にカットしているのではないということ。スクライブ技術の基本は、「起点クラック」に他ならない。ウェハをダイヤモンドで「けがく」際に起こる応力を用い、起点クラックを発生させる技術である。刃物は実際に3~5μ程度の深さしか入ってない。
従って、スクライブ技術とはすなわち「クラックコントロール」である。素材に対して最適な刃物を、最適な条件(過重や速度)で「けがいて」あげることで、クラックをより真下により深く走らせてあげることがスクライブ技術である。
4)スクライブに最適な刃物
スクライブでは、素材(ウェハ)に対し、最適な刃物の選択が必須であるが、この選択は一概に「これ」とはいえない。概ねの目安があるが、厚みや素材表面上にメタライズの有無によっても異なる。最終的には条件選定がカギとなる。テクダイヤでは、一般に以下のセレクションを目安として出している。
5)(まとめ)最適なスクライブテクニックのパラメーター
A)最適な刃物の選定
B)最適な刃物の設置(接地角度、、θ角度)
C)最適なスクライブ速度
D)最適なスクライブ加重
E)ウェハ特性(順目・逆目)
サファイア基盤はその結晶の性質上、スクライブに適した順目・逆目が存在する。逆目はチップ形状が悪くなるばかりかスクライブ・ツールの寿命にも大きく影響が生じるため、正しい方向を探しだすことが大切である。
F)アスペクト比
スクライブ自体は起点クラックの発生であり、完全な分断にはブレーキング工程が必要である。ブレーキングは「てこ」の原理でクラックを成長させるため、チップ長と厚みの比<アスペクト比>は十分確保しなければならない。
G)ウェハの全面固定
スクライブが完了し、分離を始めたチップは、スクライブ装置に設けられた、ウェハ吸着固定のための吸着穴に向かって寄っていく。このため、スクライビング時にチップ形状の不良が出ることがある。ウェハは、しっかりと全面固定されることが望ましい。
H)「ジャンピング」の抑制
スクライブ・ツールが、ウェハに乗り上げる瞬間や、ストリートをまたぐ瞬間に、刃物は一瞬飛び上がって、着地する(もしくは数回バウンドする)。これを「ジャンピング」といい、このジャンピングがスクライブ・ツール刃の寿命を縮める。
ジャンピングの抑制が、ツールの寿命を延ばし、コスト減に繋がる。
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