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金属(導体)・半導体・絶縁体の電気伝導の違いをバンド理論(Band Theory)から見てみよう。

金属(導体)・半導体・絶縁体の電気伝導の違いをバンド理論(Band Theory)から見てみよう。
半導体デバイスの動作原理を理解する上で、バンド理論(Band Theory)は、基本となる重要な考え方です。
それを使って、金属(導体)・半導体・絶縁体の電気伝導の違いを見てみましょう。

金属(導体)、半導体、絶縁体の違いは、一般的には電気伝導度の違いにより説明できると言われています。Internetで調べると、以下の様な説明を見つける事が出来ます。

電気伝導度(=電気伝導率, 導電率, 電導率とも言う。)とは、簡単に説明すると、

物質中の電流の流れやすさの程度を表わす量(定数)。

抵抗率(=電流の流れにくさを表す物質定数)の逆数。温度によって変化する。

物質により異なる定数であり、SI 単位はS/m (=ジーメンス/メートル)である。

金属などでは大きく即ち電流が流れ易く,絶縁体では小さく,半導体ではその中間の値をとる。理想的な完全導体では無限大∞となる。

https://kotobank.jp/word/%E9%9B%BB%E6%B0%97%E4%BC%9D%E5%B0%8E%E7%8E%87-102204

一般的に言われている、コンデンサ(英語では、capacitor)は、絶縁体(または誘電体)の両側を電極で挟んでいる構造です。

絶縁体は、電気をきわめて伝えにくい物質。

これに電気力が働いても,誘電分極が起こるだけで,内部や表面で電荷の移動は起こらない。

従って、絶縁体は誘電体と同義に考えられることが多い。その性能は、主に電気抵抗(普通109〜1016Ω・m)と

破壊電圧(絶縁破壊を起こすのに要する最小電圧,ふつう数〜数十kV/mm)で表される。

紙,布,ガラス,陶磁器,雲母,石綿,ゴム,油,ワニス等多種あり,特にポリエチレン,ポリスチレン,ポリ塩化ビニル等合成樹脂や,それらを組み合わせたものが多用される。

ふつうの温度や低温には,空気およびこれを多量に含むコルク,ガラス繊維,石綿等,高温には破損・変形しない煉瓦,粘土等を使う。

尚,電気の絶縁物は熱的に絶縁物であることが多く,特に真空は熱絶縁物としてすぐれている。

https://kotobank.jp/word/%E7%B5%B6%E7%B8%81%E4%BD%93-87159

ここまでくると??となってしまう方がいるかと思いますが、今回は、金属・半導体・絶縁体の電気伝導の違いについて、

バンド理論(Band Theory)を用いて、専門的な考え方を説明する事にしましょう。

バンド理論(Band Theory)というのをご存知でしょうか?

周期的な原子配列・分子配列を持つ物質、特に結晶中の原子状態を量子力学を用いて記述する理論の一つ。

半導体デバイスの動作原理を理解するのに、有用な理論と言われています。

半導体・絶縁体では、電子の存在出来るエネルギー・バンド帯として、伝導帯(Conduction Band)と

価電子帯(Valence Band)があります。

伝導帯と価電子帯の間には、電子の存在出来ない禁止帯(Forbidden Band)が存在すると言われていて、禁止帯のエネルギー幅をバンド・ギャップ(Band Gap)と呼び、Egで表します。
band_thory

出典:図解 半導体用語集



 

 

それでは、本題です。

金属(導体)・半導体・絶縁体の電気伝導の違いは、エネルギー・バンド図によって、定性的に説明できます。

エネルギー・バンドの電子占有状態が、固体の電気伝導度を決めています。

 

1.金属(導体) [ 図 (a)参照]

金属(導体)の特徴は、比抵抗が低いことで、それをエネルギー・バンド図で示すと、伝導帯が部分的に

電子に占有されているか(例えば Cu)、または価電子帯と重なっている(例えば ZnやPb)為に、図 (a)の様に、バンド・ギャップが無いことによります。

その結果、部分的に占められたバンドの最上位の電子または、価電子帯の上位の電子は、運動エネルギーを外部電界からもらって、より高いエネルギー状態に遷移します。

金属中では、占有されていないエネルギー状態が、占有状態のすぐ近くに多数あるため、電子はわずかな外部電界によって自由に移動できます。

従って、金属(導体)中では電流が容易に流れます。

2.絶縁体 [図 (c)参照]

二酸化シリコン(SiO2)のような絶縁体中では、価電子は、隣接原子間の強い結合を担っています。

これらの、結合の手は、容易に切断出来ない為に、室温近傍では、電気伝導に寄与する自由電子は、存在しません。

図 (c)に示す様に、絶縁体の特徴は、その大きなバンド・ギャップにあります。 価電子帯のエネルギー準位は、

全て電子により占有されており、伝導帯は、空になっています。

熱エネルギーや外部電界によるエネルギーは、価電子帯の電子を伝導帯に上げるには十分でない為に、

絶縁体では、伝導帯に多くの空席がありながら、伝導帯にいる電子の数は非常に少なく、その結果比抵抗が高い。

従って二酸化シリコン(SiO2)のような絶縁体中では電流が流れない。

3.半導体 [図 (b)参照]

図 (b)に示す様なエネルギーギャップが1[eV]程度と、ずっと小さい材料を考えます。

このような、材料は「半導体」と呼ばれていて、T=0[K](絶対温度)では、すべての電子は、価電子帯にあり、伝導帯には電子は存在しません。

従って、半導体は、低温では不良導体です。 室温かつ通常の圧力下では、Egは、Si(シリコン)で1.12[eV], GaAs(ガリウムヒ素)では、1.42[eV]です。

Eg(バンド・ギャップ)は、室温の熱エネルギーkTの数10倍であり、かなりの数の電子が、価電子帯から伝導帯へ熱的に励起されています。

伝導帯には多くの空の電子状態があるので、わずかな電界でこれらの電子を移動させることができ、電流が流れます。

 
Energy_band
出典:半導体デバイス


 

 

半導体に興味がある方は、是非以下の本を一読する事をお奨めします。

基礎的な、事柄が丁寧に書かれている本です。

 
「半導体デバイス- Semiconductor Devices」 2nd Edition

S.M. Sze著   南日康夫 川辺光央 長谷川文夫 訳  産業図書(株)

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