【社長投稿】国際ビジネスにおいて大切なこと。テクダイヤ製品が値段も品質もイチバンなのに、売れなかったワケ。
2005年頃、台湾市場でのお話です。
当時テクダイヤで開発した製品「コレット」。
LED製造工場で、米粒程度のLEDチップを一つ一つ吸着し移送するために使用する消耗部品です。
先端に小さな穴のあいた、ロケット型の小さな部品です。
市場では安価な鉄製コレットが主流でしたが、消耗が早いという課題もありました。
お客さんは消耗するとポイポイ捨てて取り換える。交換するたびに装置は停止します。
「タイム・イズ・マネー」な量産工場にとっては、装置停止時間はお金を
生み出してない時間となるわけでイライラしながらコレットの交換をしています。
そこに目をつけたわたしたちは、コレットの材料に従来の鉄ではなく、
特殊な硬化ゴムを使って開発しました。鉄と違って硬化ゴムのもつ微妙な柔軟性が
コレットの消耗を延命します。顧客のテストでは従来の10倍の寿命にまで延長しました!
こりゃ売れる!と小躍りしたものですが、この特殊硬化ゴムは高額な材料、製品単価も上がります。
単価が上がれば、お客さんには切り替えの動機がわきません。
そこでわたしたちは、「タイム・イズ・マネー」な台湾市場に、コスパ(コスト/寿命)で開発品の売り込みに行きました。
(従来品)
単価500円、寿命10,000チップ→500/10,000=0.05円/チップ(消耗品コスト)
(テクダイヤ開発品)
単価1,000円、寿命100,000チップ→1,000/100,000=0.01円/チップ
こんな数字を資料にして、データを添えて顧客回りをしました。
・価格は従来品より2倍、でも寿命は10倍!
・寿命10倍だから、年間資材コストは大きく下がります!
・下がるどころか、今年1年は購入する必要無くなるかもしれません!
データに興味津々で大きくうなずきながら話を聞くお客さんでしたが、その回答は期待を裏切るものでした。
「ごめん、、、要らない。」
え!なんで!とわたし。
「1年交換不要になるかもしれないが、1年後までこの会社があるかわからない」
そんなわけない!これだけ大きな会社になって!
この後もなんで?なんで?のやり取りがありましたがが、つまりこういうことです。
・競争が激しく、毎日コストダウン競争に晒されている
・1年より今月、長期より短期展望が重要
・台湾は安全保障の政治問題もあり長期的視野で考えにくい(台湾海峡問題)
・コスパ計算は重要なファクターだが、10倍は長すぎ、3倍なら考える
だから、この製品は寿命が長すぎて「”良すぎて”不要」が見解でした。
そんな判断基準もあったのか!と、モノの価値とは、
品質や性能に付随する価格と考えていた当時のわたしにとって衝撃でした。
ビジネスで勝つために、品質も値段もイチバンでも売れないワケがある。
国家の行方を頭に入れながら、永続的繁栄は望むものの、
臨機応変さを重要視することで生まれる短期思考。
品質・性能・価格だけのファクターではモノの価値は決まらない。
そこには、
企業や国家の持つイデオロギーやフィロソフィーが大きく影響していると学んだ機会でした。
国際ビジネスは、客先だけでなく街に出る。
その国の歴史を学び、国民感情を学び、ランチ価格の相場を見て、
子どもたちの来ている洋服を見て、ローカルの空気を吸う。
そうやって一般的な価値の判断基準に追加するエッセンスはないか探すようになりました。
これが、現在テクダイヤの誇る「提案力」の原点です。