3Dプリンティングによる乳がん患者の乳房再建

「ディスペンサーノズルの常識を覆す異業種への応用」
乳がんの患者数は日本のみならず世界的に増え続けています。乳がんの手術による乳房の切除は、患者に肉体的な影響を与えるだけでなく、精神的にも大きな悲しみを与えます。そのような中で、再び胸のふくらみを取り戻すことができる「乳房再建」の研究開発と普及が急がれています。

テクダイヤは、ディスペンサーノズルで、Bellaseno社(独)の3Dプリンティングを用いた乳房再建技術の開発に貢献しました。

▼新しい乳房再建方法開発の背景

乳房再建手術には、シリコンインプラントを使用した人工物による再建や、患者の弁を使用した自家組織による再建が一般的ですが、それぞれに利点と欠点がありました。シリコンインプラントによる再建では、術後の痛みがほとんどなかったり、再建のために新たな傷を増やす必要がありませんが、本来の乳房のような温かさを感じにくかったり、10年ごとの入れ替えが必要です。自家組織による再建では、人工物を使うことはないものの、手術に時間を要したり、乳房以外にも傷跡が残ったりという課題も多く残っています。そこで、これらの課題を解決する、第三の乳房再建方法が求められていました。

▼Bellaseno社(独)の乳房再建方法

ellaseno社(独)では*独自開発した3Dプリンターを用いて第三の再建方法となる研究を進めています。材料となるポリマーを3Dプリンターで精巧に印刷したインプラントを製造します。

 

テクダイヤ製ディスペンサーノズルで積み上げるインプラント

テクダイヤ製ディスペンサーノズルで積み上げるインプラント

 

インプラントを患者自身の体脂肪で組織形成することで、インプラントはゆっくりと体内に吸収され自然な乳房組織となります。インプラントが永久的に体内に埋め込まれることがないので、長期的な投薬や度重なる手術によるリスクを回避することが可能です。

 

Bellaseno社の再建技術イメージ

出展:BellaSeno GmbH
*Bellaseno社では、3Dプリンティングの受託生産も行っています。(https://www.bellamake.de/)

▼テクダイヤのディスペンサーノズル「ARQUE」

この研究のカギとなる3Dプリンティング。インプラントの材料となるポリマー(ポリカプロラクトン)をディスペンサーノズルから吐出し積み上げていきますが、その構造は非常に精密で複雑なため、小径のノズルかつ高精度な塗布が求められます。精巧な積み上げの実現には、毎分数百回のスピードで材料の吐出を出したり止めたりする高精度な塗布コントロールが重要ですが、その際の液垂れと材料詰まりが大きな課題でした。

 

先端ラップとシリンジ同口径

先端ラップとシリンジ同口径

 

テクダイヤでは、精巧な3Dプリンティングを実行するため、ノズルの先端端面を研磨する「先端ラップ」を施しました。端面を平坦にすることで「液垂れ」や「糸引き」といった症状が抑えられます。今回のポリマー材は粘土が低く扱いが困難でしたが、テクダイヤ独自の加工技術で乳房再建に貢献しました。また、流動性を高め装置信号に呼応して的確に吐出するため、シリンジとノズルの内部を同じ径にすることで150μmという小径ノズルでも材料を安定的に吐出し、お客様の求める3Dプリントの実現に成功しました。現在、前臨床段階ですが、2020年を目途に順次医療機関などに設置予定です。

 

▼小径穴あけ加工のスペシャリストとして

小径穴あけ機械加工を得意とするテクダイヤは、先端径30μmまでのディスペンサーノズルをラインナップしています。独自の加工技術により、小径かつ這い上がり少なく高い流動性を保持します。精巧な塗布が求められる電子機器の製造工程ではもちろん、バイオマテリアルなどの再生医療や宇宙開発など、さまざまな研究機関や企業で採用されています。さらに液体の塗布だけではなく、気体の噴射やチップの吸い上げなど、ディスペンサーノズルの常識を覆し異業界でも活用されています。これからも小径穴あけのスペシャリストとして、カスタムノズルはもちろんお客さまに最適なソリューションを提案し続けます。

 

本技術のプレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000025224.html

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