3Hって何?

セラミックスを作ること、料理を作ることは似ている。

セラミックスを作ること、料理を作ることは似ている。
難しく思われるセラミックスという世界。その作り方は料理によく似ています。 どんな調理方法と似ているのか、掻い摘んでお伝えします。 日本はセラミックスで世界の先端を進んでいます。セラミックスの世界に興味をある方が本稿を読んで興味を持って頂ければと思います。 目次 1.よく言われる理系の料理上手 2.ミリング/Milling (製粉) 3.通篩,ろ過 /Sieving, Filtration (ふるい) 4.混合・脱泡 / Mixing. Degassing (練り、こね) 5.成形 / Forming (型つくり) 6.焼成 / Firing (焼き、オーブン) 7.追加工・切断 / Processing・Cutting (切り分け) 8.セラミックスの世界への誘い

理系の料理上手の理由って

1.たまに聞かれる理系の料理上手
科学(化学、物理学、工学)に携わっている方の中には、良く料理の腕前も高い人がいる。
その中でよく言われるのが、科学者はレシピに忠実に料理をするから美味しくなるという理由が挙げられる。
味付けはその最たるもので、肉じゃがでもなんでも、醤油を計らずに適量の5倍も10倍も入れれば、汗が出るほど塩気の強い料理に仕上がる事間違いない。勿論、手馴れている料理人が目分量で入れる分には問題ないだろうが、かく言う私も豚の角煮(台湾風)を作ったときに、適当に醤油をドボドボと入れたら、酷い目に逢いました。(最終的には予定2倍の量にすることで何とかしましたが、この失敗の経験を基に、今ではちゃんと分量を計っています。)

豚の角煮

味付けの話だけで「セラミックスを作ることと料理は似てる」では、いくらなんでも言い過ぎになってしまいます。その他に何か要素はあるだろうか?

セラミックスの製造工程・料理の調理方法

2.ミリング/Milling (製粉)
製粉は、普段の料理ではあまり行なわない工程と思いますが、パンに必要な小麦粉はそのもの小麦を石臼のようなものを原料を挽いて細かくする工程。上新粉なら米、黄な粉は大豆など。摺りごまはゴマを磨り潰すことで、ゴマの風味をより出すことができる。カレーをスパイスから作る方はスパイスをすり鉢等で擦って細かくして使用する。色々なスパイスは組み合わせて次第で、独自の風味を出すことが醍醐味でしょう。

小麦1石臼・製粉
セラミックスも原料を細かくするためにミリング(粉砕)工程がある。料理と同じように、すでに粉になった原料を買う事もあるし、購入原料をさらに細かくする事もある。原料をより小さくする事は、後々セラミックスの性能を左右する重要な工程で、料理に例えるのなら、舌触りや風味をコントロールする事に似ている。また細かくした原料を組み合わせることで、カレーのように色々な味を出す如く、セラミックスの製品の特性・特徴をつけることになる。

スパイス

 

3.通篩,ろ過 /Sieving, Filtration (ふるい)
粉を篩に掛けることも料理の世界ではよく行われています。色々な具材を煮込んだ上でスープをガーゼで濾す事ことやジャガイモなどど煮る/蒸かした後に潰して、網で裏漉しするなど技法は、料理の舌触りを滑らかにしたり、雑味を取る方法として行われている。

ふるい2

最終目的は違えど、セラミックスの分野でも大きな粒子と取り除くフィルトレーションという工程もまた製品の性能をよくする意味ではよく似てます。この作業をすることで、製品の欠陥が少なく、性能が高い精密製品を作る上で欠かせない重要な技法の一つになっています。

 

4.混合・脱泡 / Mixing. Degassing (練り、こね)

よく混ぜること。こんな行動にも似ている点がある。粉ものや練り物は料理においてもよく混ぜる、よく練ることが肝要です。うどんやそばは適当に混ぜただけでは、ボソボソとすぐ切れる麺になってしまう。うどんはコシを強くするためによく練ることが本当に重要ですし、パンでもだまが残らないようによく練らないと美味しいものは出来上がらない。

混ぜるパン生地練り
セラミックスの分野も、よく混ぜて例えば空気も良く抜いておかないと、性能が不安定な出来の悪いものに仕上がってしまう。よく練ることでバラつきを小さくなります。セラミックスの世界では、分散をよくする、脱泡するなんて言葉で表しています。これは陶磁器を作る工程でも出てくるお話。


 

5.成形 / Forming (型つくり)
捏ねた生地を色々な形にするのも、料理の世界ではごく当たり前の手法。ポイントは加熱前に行う事かな。パスタは捏ねた生地を麺棒やローラーで伸ばし、そのあと細長く切ります。パンなら生地から必要量で定番の形にします。マドレーヌのようなものなら、型にとろみ(粘性・粘度が低い)のある液体の生地を流して形を作ることも。

成形 ピザ型抜き
セラミックスも目的に合わせて、粘土のような硬い生地から粘度低い液体がある。硬い生地は麺と同じように薄く延ばしたり、型押し、押し出し成形で使用し、粘度の低い緩い生地は、鋳込み(流し込んで作る)成形や0.1mm以下の薄いシートにすることもあります。最終製品の形やお大きさ、機能に合わせて方法を選択しています。
(クレープのように生地を薄く成形しながら焼くという工程はあまり記憶に無いです)

 

6.焼成 / Firing (焼き、オーブン)
欲しい形にしてから焼く、あるいは型に填めたまま焼く工程は、食パンやで見られる工程。麺なら熱湯に入れて茹でる。セラミックスでも同じように、熱入れて焼くという工程が殆ど。
羊羹のように熱い状態で型に流して、冷やして固めるという方法はセラミックスではあまり見かけませんが、ガラス(セラミックスの一種)を作る方法としてはよく似てます。
どちらに共通するのは、火加減が大事ということでしょうか。

窯出し食パン

7.追加工・切断 / Processing・Cutting (切り分け)
食パンなどは焼いた後必要に応じて、6枚切りに切ってみたりしてると思いますが、出来た形のまま売り物になる事も多いです。またケーキならスポンジは材料の一つとして、そのスポンジにホイップクリームを塗ったり、フルーツを飾ったりする。

この点においてもセラミックスも同じで、製品として最後に加工するかどうか、作るものによって変わりますが、製品の形に合わせて選択されます。焼きあがったセラミックスに配線をしたり別の部品をつけてみたりして付加価値をつける点もよくにていると思います。

パン切断ケーキ

セラミックスの世界に興味を持ってほしい。

8.セラミックスの世界への誘い

これまで挙げた各工程の手順はそのままセラミックスの製作手順となります(パンの作り方に似てるかな)。セラミックスを作ることも、料理を作ることも、食べ物と硬い製品という違いはあるがよく似ています。
その中で良いセラミックス製品を作るには、もちろん色々な知識が必要であるし経験もあればもっと良い。でも、それも料理も同じでしょ?

パン3陶器TECDIA製品
時事ネタとして、今話題になっているNHK「連続テレビ小説」でスカーレットは陶芸の世界を題材にしたドラマです。陶芸はセラミックスの原点ですし、このドラマを呼び水としてセラミックスの世界に興味を持って頂けると嬉しいです。この業界に足先から頭のてっぺんまで浸かっている自分のような人間はドラマの成功を期待してやまない限り。

あまり難しく考える必要はないです。つらつら書いたように料理の工程とよく似ているので、やってみれば意外と簡単かも。
真剣であればやっていけます、このセラミックスという世界は。