「薄膜成膜技術 スパッタ法とは」

半導体製造工程の中で、基板となる物質の表面に薄膜を付着させる手法としてよく使われるものにはスパッタ法と蒸着法があります。
スパッタとは材料に運動エネルギーを与え、材料を個体からたたき出して基板上に堆積させる方法で、蒸着とは材料に熱エネルギーを与え、材料を蒸発させ基板上に堆積させる方法です。
両者を比較した場合、スパッタ法には膜厚を緻密に制御可能、膜の密着力が強いなどの利点があります。
今回はスパッタ法について、原理や代表的な方式を紹介します。

DCスパッタ法

まずはスパッタ法がどのような原理であるか、最初に考え出されたDCスパッタ法を例に説明すると以下の通りとなります。 ① 基板と貴金属素材ターゲットをセットした装置を高真空状態にする ② 不活性ガス(主にAr)を装置内に導入する ② 貴金属素材ターゲットにマイナスの電圧を印加してグロー放電を発生させる ③ 不活性ガス(主にAr)原子をイオン化する ④ 高速でターゲットの表面にガスイオンを衝突させて激しく叩く ⑤ ターゲットを構成する成膜材料の粒子を激しく弾き出し、勢いよく基板の表面に付着・堆積させ薄膜を形成する

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この方法の装置構造は簡単ですが、① ターゲットに絶縁物を使用できない ② 不活性ガスをイオン化するグロー放電を起こすためにガス導入量が多く必要であり、それが障害となって成膜速度が遅くなる ③ 気体がイオンと電子に分かれたプラズマ状態になっており、基板が高温のプラズマにさらされ高温となるという欠点があります。

このような欠点を解決するために以下の方法が考えられています。

RFスパッタ法

まずターゲットに絶縁物を使用できるようにするために考えられたのがRFスパッタ法です。 DCスパッタ法が直流電圧をかけていたのに対し、高周波電圧をかける方法です。 交流を使用することで、重量の軽い電子が自然とターゲット側に引き寄せられスパッタできるようになります。 ただしDCスパッタ法と比較すると絶縁物へのスパッタはできるようになる,膜密着力が強いという利点がある一方で、成膜速度が遅い,基板へのダメージが大きい,電源とマッチングボックス(整合器)が必要な為、装置が高価になるという欠点があります。

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マグネトロンスパッタ法

次に製膜速度を上げるために考えられた方法がマグネトロンスパッタ法です。 この方法はターゲットの裏に永久磁石を配置し強力な磁場を発生させ、電子の密度を高めることでArイオンを引き寄せスパッタを実施しています。 また基板温度上昇の原因となる負イオンや二次電子を磁界で捕らえることで基板の温度上昇が抑制できると共に、捕えた電子でガスイオン化が促進されることで成膜速度を高速(約10倍)にすることができます。 この方法はRF,DCのどちらの電源でも用いることができるため、スパッタによる成膜技術の主流になっています。 ただしこの方法にも磁界を用いるため、ターゲットの減りにむらができるという欠点があります。

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この他にもイオン銃から放出されたイオンをターゲットに照射されスパッタするイオンビームスパッタ法があります。放電でプラズマを作る必要がないため不純物が混ざらない,より薄膜(10nm以下)での成膜が可能等の利点がありますが装置が複雑で高価になるうえ成膜速度も速くありません。

まとめ

今回、紹介したスパッタ技術は薄膜を作るために利用されており、様々な分野で使われています。 例えば半導体部品や液晶パネルの作製、眼鏡やレンズと言った光学製品をはじめサーモグラフィーや赤外線センサーと言ったその他の光学素子や光学部品にも応用されています。

また最近では工具へコーティングを行い腐食や劣化を防ぐために利用されたり、プラスチックへ金属の光沢を施したり、車などの装飾の目的で使用されたりもしています。 このように非常に汎用性の高い技術で、皆さんの身近にあるものにもよく使われています。 興味を持たれた方は一度探してみてください。

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