君はドリルを研いだことがあるかい?

金属加工を生業にする技術者にとって、工具を研ぐ技術は必須といっても過言ではない。
工具を研ぐ技術は加工の幅を広げる大切な技術である。
私も入社1年目のとき、ひたすらドリルを研ぎ続けていた時期があった。
自分でドリルを研げるようになろうと思って、練習を始めたきっかけは1品の加工品。
右上の穴が、私があけた穴である。
スポット(穴あけ加工前の下穴)をあけ、ドリルで穴をあけるだけの簡単な工程・・・
だったはずが、穴の淵が盛り上がり、著しく美観を損なう仕上がりになってしまった。
美観を損なうだけで済めばいいが、これではC面も大きく取らないといけないし、
最悪の場合は盛り上がりが残ってしまう可能性もある。
偉大な先輩に相談すると、ドリルの刃先が摩耗してしまっているとのこと。
その先輩はダイヤモンドホイールで颯爽とドリルを研ぎ上げ、私に渡してくれた。
そのドリルで加工したのが残り3つの穴。
私が金属加工という世界にまたひとつ、深くのめり込んだ瞬間だった。
感動のあまり撮影した写真が上の写真である。
本当の意味で、“自分の手で” 仕上がりの品質を左右してしまうこの世界はなんて面白いのだろうと感じた。
これは約6年前、2015年12月の出来事。
今では業務内容も移り変わり、ドリルを研ぐ機会はめっきり減ってしまったが、こういった感動を感じた初心は忘れずに仕事と向き合っていきたい。
そして、いつかは社内でドリル研ぎコンテストをやってみたいと思う(笑)