3Hって何?

品質情報の知的財産継承という課題

品質情報の知的財産継承という課題
~品質情報データベースの理想と現実~

品質情報の知識を部下や後輩、他部門と共有する手段として、品質情報データベースが
思い浮かびます。検索コード一発で、関連する品質、技術情報が引っ張り出せて閲覧できれば、
説明しなくても共有できるはず。
そんなイメージで身近な品質情報をファイルにまとめ、目次と検索キーワードをマトリックス
にして、ハイパーリンクでつないでデータベース作成を始めて19年、果たして思い通りのものが
できたか?

お手製の品質情報データベース

品質保証の仕事をしていると、お客さまからのクレームや社内品質事故に際して、
まず原因調査をします。原因をつかめることもあるし、調べてもわからないことも
あります。原因がわからなかった場合でも、調べたことは役に立ちます。
どう考えて何を調べ、その結果、どう考えてどう対処したかを書き残すことで知的財産の
蓄積になります。

私の場合、クレームや品質事故だけでなく、調べ事や評価全般を対象に区分を設定して
データベースに蓄積することに取り組みました。
実験的評価検証はQCR-XXxxx、品質調査はQCT-XXxxx、歩留調査はQCY-XXxxx、
チップコン静電容量調査はQCC-XXxxx、チップコン信頼性評価はHRT-XXxxx、
チップ抵抗信頼性評価はRHT-XXxxxとしてシリーズ化しました。
XXは年次、xxxはその年のシリアル番号です。2002年12月1日に入社して、
2003年3月から開始しています。
現在(2022/3/27)まで、QCRは637件、QCTは1,094件、QCYは215件、QCCは278件、
HRTは422件、RHTは41件、合計で2,687件が蓄積されています。

始めてから10年間は大半は自分一人で蓄積したので、検索コードを適当に入れて簡単に
サーチすることができました。自分の経歴書みたいな存在で、振り返りが楽で大変役に
立ちました。後半、マネジメント業務が主体になってからは自分が入力することは
ほとんどなくなりました。今は部下が引き継いでくれています。

 

理想と現実のギャップ

自分が実務をやっていたときは気が付かなかったのですが、時間が経ってかなり昔のデータを
検索したときに気づいたことがあります。
自分が探したいキーワードで検索を入れたのですが、見つからないのです。
そんなはずはない、確かにあったはず...と思って、直接ワードではなく、
あのときの客名とか、確かあの年の夏だったよな、とか、
自分しかわからないキーで引いて探せたのですが、設定した検索用のキーワードが
思い浮かばずヒットできなかったのです。
当時は適切なキーワードを考えたつもりだったのに、後になるとそれが浮かばないと
簡単に検索ができない、ましてや自分以外の人がキーワード検索が簡単でないことが
わかりました。・・・気付くのが遅い。

データベースのキーワードはどうあるべきか

必ず思い当たるキーワードというのが、意外と難しいと思います。
”知識の構造化” JSCA選書(日本規格協会)によると、定義属性、不具合モードと
その発生要因に分解し、普遍的な原理原則をキーワードにするのがよいようです。
ただし、これを実践するにはかなり慣れが必要だと思いました。

キーワードが適切ならデータベース構想はうまくいくのか

残念ながらキーワードだけでは十分とは言えません。
データベースを使っていく習慣が重要なのです。
-データを個人持ちする人、
-データベースへの登録を忘れる人、
-後回しにしてそのままになったりする人、
などがいます。これだと、データベースが定着せず、活用が広がりません。
データベース登録と検索利用を習慣化してこそ、データベースの知的財産としての有効性が
発揮できるのです。そのためには、利用者の教育や啓蒙活動が必要になってきます。
利用者それぞれにデータベースの有効性が腹落ちしたら、手放しにしても定着性は
期待できるでしょう。

【品質情報データベース構築の必要条件(まとめ)】
・適切な検索キーワードの設定
・品質情報データベース活用の動機付けとルーチン化

理想は機能的な品質情報データベースシステムの活用ですが、
現実は、検索性と登録&利用の習慣化が不十分で、他人の経験を活用できるレベルには達していません。
過去の調査結果が、データベーススタイルにまとまっているだけましなのですが、
道半ばと言わざるを得ません。
失敗談として、次世代への申し送りとさせてもらいたいと思っています。