3Hって何?

機械部品の表面処理について

機械部品の表面処理について
表面処理には、いろいろありますね。めっき、陽極酸化膜、熱処理や特殊分野では固体潤滑剤なども多く使われています。ここでは、精密部品に昔から使用されていた硬質クロムめっきの話とその他の処理について少し触れておきます。

一般的なのは、めっき処理ですが、金属の表面を他の金属の薄い層で覆うことを「めっき」と言っています。従来からの処理方式の主流は、湿式処理法で、電気メッキと化学めっきがあります。

トタンやブリキは、溶融した亜鉛または錫に鉄板を浸してめっきしたものです。一般的に電気分解によってめっきするものを電気めっきと言います。電気めっきの原理は、下図の通りです。

メッキ液が入っためっき槽の中にワーク(めっき前の素材)を入れマイナス電極に、表面に付けたい金属(Ag、Ni、Zn、Cr  etc)をプラス電極に接続して、通電する方式です。

 

めっきの用途は、めっきの種類によってほぼ決まっており、例えば、亜鉛メッキは鉄鋼の防食、光沢。ニッケルメッキは、防食、美観が目的です。過去に、半導体製造用の封止金型業界では、万能処理として「硬質クロムめっき」を使用していました。これには、耐摩耗性、耐食性、耐熱性、離型性などの多目的に適したものです。また、電気メッキであるため、量産品対応が可能で、膜厚は3~5µmと小さくても機能を果たすため、精密形状部品に適用できるのです。電気メッキ共通の注意事項として、「エッジ部に花が咲く」「ポケット部底面は、R仕上げ必要」ということが上げられます。下図左の外形端に膨らんだ部分を慣用的に「花が咲く」と言い、処理後にカッターの刃先等で、除去しておかないと離型不良等が発生します。下図右の部分のように鋭い隅はめっきが付きにくいという特徴を理解しておくと良いです。

 

しかし、近年では環境要求の健康被害防止の観点から、六価クロムを使用したものは使用しない方向となっています。メッキされた製品への六価クロムフリーの対応や三価クロムへの代替えが進んでいる状況です。よって、使用される目的に沿って代替え処理の検討が進んでいくものと考えます。防錆処理として、電気メッキ法を使用した代表的なものは、レイデント処理(商品名)があり、機構部品等に良く使用されます。電気メッキとは異なり、化学メッキがあり、代表的には無電解ニッケルメッキがあります。商品名として「カニゼンメッキ」と呼ばれています。薄膜処理が可能なため、硬質クロムめっきからの代替え用途が多いようです。

また、湿式処理ではなく「乾式処理」方式として、PVD(物理蒸着)、CVD(化学蒸着)処理が高硬度目的(キズつきにくい)で使用されることが多くなったようです。PVD処理の代表的なものは、イオンプレーティング法によるTiNやCrN処理があり、処理温度が200~500℃と比較的低いため、焼入れ鋼を使う金型等にも使用されています。CVD処理の代表的なものは、ダイヤモンドコーティング等です。主にドリル、カッター等の刃物へのコーティングに使用されています。

他に、アルミニウム材の処理として、陽極酸化膜処理(通称:アルマイト処理)があります。表面層が改質され耐食性、高硬度化、電気絶縁性付与されます。鋼材表面への熱処理では、「高周波焼入れ」が伝動部品用の軸等に使われます。表面硬度が高く(HRC58-62程度)なり、耐摩耗効果が得られます。

耐摩耗目的では、トライボロジー理論(潤滑技術)から、オイル、グリスが使用出来ない部分で固体潤滑材の利用も近年増えているようです。代表的なものとしては、「二硫化モリブデン」や「グラファイト」等で、これを含侵されたブッシュ等の機構部品も市販されるようになってきています。

以上、表面処理も様々なものがあり、その目的に沿ったものを使用することを今後も考えていきたいですね。