3Hって何?

判断を行う上で大切なこと

判断を行う上で大切なこと
製造業では望ましい製品特性を実現する為に様々な場面で量産のデータを取得したり、製造条件を変える実験を行ったりします。今回はその上で心にとめておきたい確証バイアスを取り上げたいと思います。

人は自分の考えが正しいかどうかを確認してしまう ~確証バイアス~

人間は自分の考えが正しいかどうかを確認しようとするとき、自分の考えが正しいことを示す証拠を集めることに専念しがちです。その反面、自分の考えが間違っている証拠がないか確認することはおろそかにする傾向があると言われています。
これは確証バイアスと呼ばれています。

単純に考えると自分の考えを支持するデータがあるなら自分の考えが正しいと思って良さそうですが、実際には、「自分が考えに入れていない要素によって自分の考えを支持するデータが出ているだけ」な可能性があります。

自分では「AだからBとなった」と判断した事象が、実際は「AでなくてもBとなった」かもしれないということです。

(懐かしの)オオカナダモの実験 ~対照実験~

小中学校時代、植物が二酸化炭素と光で光合成をおこなうことを確認する実験として、次のようなものを習った方も多いかと思います。

試験管を3つ用意し、以下の様にする。
①二酸化炭素が溶けている水+オオカナダモ+BTB溶液を入れ、日光にあてる
②二酸化炭素が溶けている水+オオカナダモ+BTB溶液を入れ、日光にあてない
③二酸化炭素が溶けている水+BTB溶液を入れ、日光にあてる(オオカナダモは入れない)

時間がたつと①は光合成で水中の二酸化炭素が減って水は中性に近くなり、②は逆に呼吸によって酸性度が上がり、③は変化しないことが、BTB溶液によって色の変化で観察できます。
この実験では①と②比較により「光がなくても二酸化炭素量が減る」ことがないかを確認し、②と③の比較により「日光と水の作用だけでも二酸化炭素量が減る」ことがないかを確認しています。鍵となる条件以外を固定して鍵となる条件のみを差を見る、いわゆる対照実験を行っているわけです。
これは「自分の考えが正しくないことを示す証拠」を積極的に探して、それが「ない」ことを確認しているとも言えます。
このプロセスを行わないと「迷信」に捕らわれることがあります。

知能が迷信を生む ~ハトの迷信行動~

1900年代中頃、心理学者のスキナーによって面白い実験結果が報告されています。
それによると、ハトを実験用の箱に入れて15秒ごとにエサを与えるようにすると、首を振る等の特異な行動を繰り返す鳩が現れるそうです。
これらのハトは餌が出る直前に偶然首を振っていた為に、「首を振るとエサがもらえる」と学習してしまっていたのです。味をしめたハトは次のエサが欲しくて首を振り続けます。エサはハトの首振りとは関係なく15秒毎に与えられますが、ハトから見ると「首を振ったからエサが出た」ように見える為、ずっと首を振り続けることになります。
迷信を信じるハトの出来上がりです。

「正しいか?」だけでなく「間違ってないか?」も確認する

何かの判断を行う際、自分の考えが正しいことの証拠を探すだけでは危険が伴います。実験のハトの様に誤った答えを出し続けることになりかねません。自分の考えが正しくないことを示す証拠を積極的に探して、それがなさそうであることを確認することもまた重要だと言えます。