コンデンサや抵抗器の製品ラインナップを見ると、一見不思議な数値の並びが目に入ります。これにはJIS規格で定められた「E標準数列」が関係しています。このブログでは、E24やE12の標準数列がどのように決定されるのか、またその利便性について詳しく解説します!
不思議な標準数と標準数列(E)
目次
1.不思議な標準数
弊社のコンデンサカタログ製品の場合、例えば高誘電率系(EIA ClassⅡ)に分類される製品ラインナップだと4.7pF・5.6pF・6.8pF・8.2pF・10pF・12pF・15pF...と、一見すると不思議な数字の並びとなっています。
機器の寸法や製品ラインナップの値を決める際に標準数(preferred number)という基準が採用されることがあるようです。標準数とは日本産業規格(以下、「JIS規格」)のJIS Z 8601-1954「標準数」の中では、"工業標準化・設計などにおいて数値を定める場合に、選定の基準として用いる標準数について規定する。"として記載されています。(「1.1 適用範囲」より引用)
機器の寸法や製品ラインナップの値を決める際に標準数(preferred number)という基準が採用されることがあるようです。標準数とは日本産業規格(以下、「JIS規格」)のJIS Z 8601-1954「標準数」の中では、"工業標準化・設計などにおいて数値を定める場合に、選定の基準として用いる標準数について規定する。"として記載されています。(「1.1 適用範囲」より引用)
2.E標準数列
一般的な抵抗品の抵抗値やコンデンサの静電容量値を対象として同じくJIS規格に JIS C 60063-2018「抵抗器及びコンデンサの標準数列」という規格があり、その中でE標準数列というものが推奨されています。これらの数字を使用すると便利なようです。
同JIS C 60063-2018の中では、E標準数列(E series) について“10nごとに一定の数をもち、等比数列から得られ、丸められた数値の無限級数”と記載されています。(「3.1E標準数列」より引用)
そして同JIS規格の中にはE24・E12・E6・E3というE系列の標準数列が掲載されています。Eの後ろに数字がついていますが、これらは1から次の位の10までの間に一定の数が存在しているということです。
例えばE12数列の場合、1から10までの間に「12個」分の等間隔の数字があるようです。同JIS規格の各E標準数列を抜き出し、許容差の情報を足したものを表Aにしました。
表A
(JIS C 60063-2018「表1−有効数字2桁の標準数列」および「表3−許容差及び推奨するE標準数列」[E3~E24の範囲]の一部内容を加工しています。)
E24標準数列では「24回掛けたら10になる」という数字の等比となっているようです。
② ¹²√10(10の12乗根)を計算(電卓に「10^(1÷12)」を入力)
1.21152...という数値が出てきます。E12標準数列はこの数列の等比となっており、これを12回かけていくと次桁の10の倍数になるようです。
上記はそれぞれ公比が²⁴√10 、¹²√10 の等比数列ということですね。
また、E24数列とE12数列の数字の並びを見比べると、E24の方がE12よりも細かくなっているが、E12にもE24と同じ数値が含まれていることが分かります。(下記表Bの黄色箇所参照)
表B
同JIS C 60063-2018の中では、E標準数列(E series) について“10nごとに一定の数をもち、等比数列から得られ、丸められた数値の無限級数”と記載されています。(「3.1E標準数列」より引用)
そして同JIS規格の中にはE24・E12・E6・E3というE系列の標準数列が掲載されています。Eの後ろに数字がついていますが、これらは1から次の位の10までの間に一定の数が存在しているということです。
例えばE12数列の場合、1から10までの間に「12個」分の等間隔の数字があるようです。同JIS規格の各E標準数列を抜き出し、許容差の情報を足したものを表Aにしました。
表A
(JIS C 60063-2018「表1−有効数字2桁の標準数列」および「表3−許容差及び推奨するE標準数列」[E3~E24の範囲]の一部内容を加工しています。)
E24標準数列では「24回掛けたら10になる」という数字の等比となっているようです。
① ²⁴√10(10の24乗根)を計算(電卓に「10^(1÷24)」を入力)
1.100694...という数値が出てきます。E24標準数例はこの数値の等比となっており、これを24回かけていくと次桁の10の倍数になるようです。同様に、E12標準数列では「12回かけたら10になる」という数字の等比となっているようです。
② ¹²√10(10の12乗根)を計算(電卓に「10^(1÷12)」を入力)
1.21152...という数値が出てきます。E12標準数列はこの数列の等比となっており、これを12回かけていくと次桁の10の倍数になるようです。
上記はそれぞれ公比が²⁴√10 、¹²√10 の等比数列ということですね。
また、E24数列とE12数列の数字の並びを見比べると、E24の方がE12よりも細かくなっているが、E12にもE24と同じ数値が含まれていることが分かります。(下記表Bの黄色箇所参照)
表B
3.許容差について
上の2項で示した表(表A・表B)の中には「許容差(%)」の情報も入っています。
同JIS規格JIS C 60063-2018の中でそれぞれのE標準数列には推奨されている許容差がセットで掲載されています。例えばE12数列の場合、許容差として±10%の範囲が想定されています。標準数を用いると、これらの許容差を想定したときに通常の数字の並びを使用するよりも隙間なく使用でき便利なようです。
例としてE12数列で規定されている数値に、許容差(±10%)の範囲を設定してグラフにしました。(図1)
また、比較として10〜100の範囲で、E12数列(等比)の数字の並びと10ずつ増える数字の並び(等差)についても許容差±10%の範囲を設定したグラフを並べています。(図2)
図1
図2
図2グラフの数字の並び±10%の範囲では隙間があったり、重複する範囲があったりするのに対し、図1のE12数列の並び±10%の範囲では、隙間や値の重なりが少ないことが確認できます。製品ラインナップを用意する際、必要以上に用意する必要がなくなったり、ラインナップの隙間が埋められたりと、効率的な運用ができそうです。
同JIS規格JIS C 60063-2018の中でそれぞれのE標準数列には推奨されている許容差がセットで掲載されています。例えばE12数列の場合、許容差として±10%の範囲が想定されています。標準数を用いると、これらの許容差を想定したときに通常の数字の並びを使用するよりも隙間なく使用でき便利なようです。
例としてE12数列で規定されている数値に、許容差(±10%)の範囲を設定してグラフにしました。(図1)
また、比較として10〜100の範囲で、E12数列(等比)の数字の並びと10ずつ増える数字の並び(等差)についても許容差±10%の範囲を設定したグラフを並べています。(図2)
図1
図2
図2グラフの数字の並び±10%の範囲では隙間があったり、重複する範囲があったりするのに対し、図1のE12数列の並び±10%の範囲では、隙間や値の重なりが少ないことが確認できます。製品ラインナップを用意する際、必要以上に用意する必要がなくなったり、ラインナップの隙間が埋められたりと、効率的な運用ができそうです。
4.E標準数列と等比数列
同じくJIS C 60063-2018(「4.1 有効数字2桁の標準数列」)の中に“E24標準数列は、理論的な数を有効数字2桁に丸めた値の等比数列から得る”という記載があります。そして下記式が掲載されています。(同項からの引用)
V=(²⁴√10)ⁿ
V: E24標準数列の値
n: 全ての正負の整数
ここで視覚化のため、n=0~48を横軸に、それに対応する数字(V)の並びを縦軸にグラフを作成しました。(図3)
図3
本稿前半で²⁴√10=1.10069...と出していました。図3グラフではこの数値 の等比となっており、これを24回かけると次桁の10の倍数になること(また、次桁までに24個の数字が存在すること)が確認できます。またグラフは指数関数的な動きとなっています。
上記図3グラフでは n = 0~24の範囲が重なりすぎて数値が見えません。下記図4グラフでは縦軸のみ対数目盛に変更してみました。
図4
n =0~24範囲の数字もグラフ上で見えるようになりました。指数関数は縦軸を対数目盛(片対数グラフ)にするとグラフの動きが直線状になるようです。
補足 :
上述していますが、( )n におけるn の値は全ての正負の整数を取ることから、nが負、マイナスの値の場合もあります。その場合、( )n は1未満の小数となります。(例 n=1、( )n → 0.91)図2、図3グラフではこの範囲は今回省略しています。
また、一部の数字(2.6~4.6および8.3、26~46および83)で、2項のE標準数列で掲載したE24数列の表Aとは数字が少し異なるものが見られます。これはJIS C 60063-2018「有効数字2桁の標準数列 注釈」によると、“E24標準数列における27〜47の範囲及び82の値は、厳密な数学的な規則から逸脱する。ただし、この*対応国際規格の第1版が発行された1952年以前にこの標準数列は確立していたため、その歴史的背景を考慮すると、この逸脱の是正は適切ではない。”と記載されています。既に広く利用されていた数字を採用したようです。そのため、本稿の図3、図4のグラフ上に表示されている数字は、実際のJIS規格JIS C 60063-2018 のE標準数列の数字とは一部異なっています。
*上記の対応国際規格とはJIS規格ではなく、ISO規格(ISO-3)です。同JIS内注記「対応国際規格:ISO3, Preferred numbers-Series of preferred numbers(MOD)」
V=(²⁴√10)ⁿ
V: E24標準数列の値
n: 全ての正負の整数
ここで視覚化のため、n=0~48を横軸に、それに対応する数字(V)の並びを縦軸にグラフを作成しました。(図3)
図3
本稿前半で²⁴√10=1.10069...と出していました。図3グラフではこの数値 の等比となっており、これを24回かけると次桁の10の倍数になること(また、次桁までに24個の数字が存在すること)が確認できます。またグラフは指数関数的な動きとなっています。
上記図3グラフでは n = 0~24の範囲が重なりすぎて数値が見えません。下記図4グラフでは縦軸のみ対数目盛に変更してみました。
図4
n =0~24範囲の数字もグラフ上で見えるようになりました。指数関数は縦軸を対数目盛(片対数グラフ)にするとグラフの動きが直線状になるようです。
補足 :
上述していますが、( )n におけるn の値は全ての正負の整数を取ることから、nが負、マイナスの値の場合もあります。その場合、( )n は1未満の小数となります。(例 n=1、( )n → 0.91)図2、図3グラフではこの範囲は今回省略しています。
また、一部の数字(2.6~4.6および8.3、26~46および83)で、2項のE標準数列で掲載したE24数列の表Aとは数字が少し異なるものが見られます。これはJIS C 60063-2018「有効数字2桁の標準数列 注釈」によると、“E24標準数列における27〜47の範囲及び82の値は、厳密な数学的な規則から逸脱する。ただし、この*対応国際規格の第1版が発行された1952年以前にこの標準数列は確立していたため、その歴史的背景を考慮すると、この逸脱の是正は適切ではない。”と記載されています。既に広く利用されていた数字を採用したようです。そのため、本稿の図3、図4のグラフ上に表示されている数字は、実際のJIS規格JIS C 60063-2018 のE標準数列の数字とは一部異なっています。
*上記の対応国際規格とはJIS規格ではなく、ISO規格(ISO-3)です。同JIS内注記「対応国際規格:ISO3, Preferred numbers-Series of preferred numbers(MOD)」
5.最後に
今回は標準数と標準数列(E標準数列)について調べてみました。
実際の弊社カタログのコンデンサ品は、主にE12数列の並びが見られますが、一部50pF(E12標準数列にはない)といった容量値の製品もあります。そして許容差ともいえる製品の公差についても、±10%に限らず、±5%、±20%といったラインナップも標準カタログ品として用意されています。
また、1.0pF以下の低い容量値のコンデンサ製品については、%での公差表示ではなく±0.05pF、±0.10pF、±0.25pFといった固定値を採用しています。その他、テクダイヤはお客様の要望に応え、E標準数列に限らず、カスタム品として様々なセンター値をもった容量・公差のコンデンサ製品を多数設計、製造販売しています。
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実際の弊社カタログのコンデンサ品は、主にE12数列の並びが見られますが、一部50pF(E12標準数列にはない)といった容量値の製品もあります。そして許容差ともいえる製品の公差についても、±10%に限らず、±5%、±20%といったラインナップも標準カタログ品として用意されています。
また、1.0pF以下の低い容量値のコンデンサ製品については、%での公差表示ではなく±0.05pF、±0.10pF、±0.25pFといった固定値を採用しています。その他、テクダイヤはお客様の要望に応え、E標準数列に限らず、カスタム品として様々なセンター値をもった容量・公差のコンデンサ製品を多数設計、製造販売しています。
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