3Hって何?

なぜコンデンサに流れる正弦波信号の電圧の位相は電流の位相よりも90°遅れるのか?

なぜコンデンサに流れる正弦波信号の電圧の位相は電流の位相よりも90°遅れるのか?
テクダイヤは高周波・マイクロ波・光通信機器用の単層コンデンサ(Single Layer Capacitor)のフラッグシップメーカーとして長いキャリアを誇っています。
そのコンデンサにおいて、通信機器や電気・電子に携わるほとんどのエンジニアは、その性質の一つとして、正弦波の信号を加えると、電圧の位相が電流の位相よりも90°遅れるということを、言葉としても現象としても知っています。
しかし、それが、なぜそうなるのかの説明を求めても、なかなか明快・簡潔に説明できる人は少なく、ここではそれを数学的に説明すると共に、その後、理解しやすい形での説明をしてみようと思います。
ただし、ここで扱うコンデンサは、損失がなくインダクタンス成分を持たない理想コンデンサとします。

まず、コンデンサに正弦波交流信号を与える回路を次に示します。

 

ここで、v(t) [= V*sinωt]は、正弦波交流信号源、i(t)は交流電流、q(t)はコンデンサに蓄えられる電荷とし、コンデンサの静電容量をCとすると、これらの関係式は、次のようになる。

i(t) = dq(t) / dt

次に、電荷q(t)とコンデンサの両端にかかる電圧v(t)は、q(t) = C×v(t) であるため、i(t)は次のようになる

i(t) = dC×V×sinωt) / dt = C×V×(dsinωt / dt)

この式によりsinを微分することになるので、sinを微分するとcosになるので、i(t)は、

i(t) = C×V×ω×cosωt

となり、正弦波交流信号v(t)をコンデンサに与えると、これら数式により、電流は余弦(cos)波となる。2次元ユークリッド空間における単位円において、起点をsin0°とすると、0の点になり、cosでは90°進んだ1の点になるので、コンデンサにおける電流の位相は電圧の位相よりも90°進むということが数学的にわかります。

 

電流の0点、電圧の0’点 :  電流が0の点では、コンデンサはカラ(電圧は0)である。

電流のA点、電圧のA’点 : 電流が最大の点では、コンデンサに充電される電圧の増加量(充電量)が最大になる。

電流のB点、電圧のB’点 : 電流が0の点では、コンデンサの電圧は最大になる。

電流のC点、電圧のC’点 : 電流が最小の点では、コンデンサから放電される電圧の減少量(放電量)が最大になる。

 

さて、数学的に説明をすると以上なのですが、それでも計算式が入るとわからないとか、微分ってなんだっけ、昔学校で習ったような気がするので言葉はなんとなく知っているんだけどなんだったか忘れたとか、という声が聞こえてくるので、次の説明だとわかりますかね。

一つのグラスに水道の蛇口を開いて水を溜めてみる。そして、水が溜まったら、グラスを傾けてグラスの水をカラにしてみる。それを繰り返す。

それでは、蛇口が閉じた状態から徐々に蛇口を回して開けていくと水が出ます。最終的に蛇口を全開にすると勢いよく水が出ます。今度は、蛇口を徐々に閉じていき、最終的に全閉にすると水が止まります。

グラフで、最初に蛇口が閉じている状態の点を(0)とすると、その時にはグラスの中には水がありません。これをコンデンサへの電流と電圧に置き換えると、まだコンデンサに電流が流れこんでいないので、コンデンサには電荷が溜まってなく、電荷(水)の量(電圧)は0(0’点)。

次に、蛇口を徐々に開け水をグラスに注ぎこみます。蛇口が全開になった時(A点)には、グラスには勢いよく水が注がれています(A’点)。これをコンデンサに流れ込む電流に置き換えると、(A点)では電流の量が一番多く流れ込んでいる状態になります。そこから、蛇口を徐々に閉じていき、完全に閉じ切るとグラスへの水の流れ込みが止まります(B点)。この時には、グラスの中に溜まった水は満水(になっています(B’点)。コンデンサに置き換えると、電流が止まり、電荷がいっぱい(電圧が最大)になっている状態になります。つまり、コンデンサが充電された状態になります。

この先は、今度は、グラスを徐々に傾け、水を排出していきます。グラスを最も傾けた状態の時(C点)に水が最も多く流れだしています(C’点)。ここから傾けたグラスを徐々に元に戻していきながら水を全て排出します(0点)。この時点では、グラスの中の水はカラになっています(0’点)。コンデンサに置き換えると、流れ出る電流が止まり、コンデンサの電圧が0になっている状態になります。つまり、コンデンサが放電された状態になります。

このことを周期で表すと、一回の周期(360°)で、充電・放電がおこなわれるとすると、電圧の動きは電流よりもちょうど90°遅れて動くことになるため、表題の ” なぜコンデンサに流れる正弦波信号の電圧の位相は電流の位相よりも90°遅れるのか? ” の回答が成立します。

 

ところで、一回の周期って、なんで360°なの? と、これを書いているところを横目で見られて質問されたのだが。。。。。。  それぐらい自分で調べなさい。意外な理由がありますよ。