SEM(電子顕微鏡)と心眼

モノが見えないのではなく、見たいものが判らないだけ。
初めてSEMを使うと、なかなか上手にSEM写真が撮れないことが多い。
そんなSEM迷子に送る、ちょっとだけタメになる話。
1.SEMは心眼でみる!
2.心眼ってなに!?
3.対象をイメージすることが、SEM観察の近道。
4.モノが見えないのではなく、見たいものが判らないだけ。

SEMは心眼でみる!

SEM(電子顕微鏡)は非常に小さいモノを見る為の装置です。セラミックの研究や開発に携わる人ならかなり高い確率で使用していると思います。数um(1um=1/1000mm)という非常に小さい表面の段差を見ることが出来る事から、セラミックの原料粉末や、焼締めたセラミックの塊、あるいは加工した後の表面など、造ったモノがどの様になっているかを知るための重要な道具です。セラミックの開発をするなら、SEM(EDXもあると良い)とXRF(X線回折装置)は必須の機器と言っても過言ではないでしょう。

SEMはセラミックを扱う上では重要で出番も多い機器ですが、実際に使用すると「ピントが合わなくて判らない」とか「何をみているか判らない」ということが良く起こります。自分でも経験していますし、SEMに慣れていない人から良く聞くコメントです。そんなに時私が掛ける言葉は「SEMは心眼でみる!」です。
「SEMで心眼?」と訝しむ反応が多く、どういう事なんだろうかと思う人や、冗談だろうと笑ってくれる人もいます。私としては半分冗談というか半分本気です。

フォーカス2s ボケフォーカス2s

心眼ってなに!?

何故心眼という前に、まず「心眼」という言葉を使いながら、調べたことが無かったので辞書から引用しました。「言葉はちゃんと調べてから使うように」は私の中学時代の恩師の言葉ですので、この場を借りて調べてみます。(ということは、私は恩師の言葉を守っていないことになり何ともバツの悪い状況ですね)

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◇しんがん 【心眼】
物事の真実の姿をはっきりと見抜くことが出来るような心のはたらきを目に見立てた語
(『スーパー大辞林 3.0』 株式会社 三省堂 (c)Sanseido Co., Ltd 2006-2014 )

◇英語ではMind’s eyeと書くようです。
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ふむふむ、一応用法としては間違っていないような気がします。

目1

さて、SEMでより良い写真を撮るためのイロハ(ABC)は、私が語るよりも、遥かに良い情報をインターネットを通して調べる事が出来ると思います。私も色々と参考にしている所も多いので、SEM操作の技術的な部分はここでは触れません。それよりも心眼です心眼。

心眼はすでに国語辞典を引用しているように、心の働きとなってしまいます。ただ流石に心の働き、あるいは根性で見ろというつもりは更々無いです。そういう意味では心眼は比喩的な表現として使っています。

対象をイメージすることが、SEM観察の近道。

SEMを使っていると稀にフォーカスがどうやっても合わなくて困る事があります。例えば鏡面研磨したサンプルに凹凸が無いために非常にフォーカスを合わせにくい。この場合によく使う手としては、サンプル表面にたまたま付着しているゴミや、サンプルが小さいのであればサンプルのエッジを探してフォーカスを合わせることがあります。この場合表面に凹凸が無いために合わせにくいので、合わせやすい対象を見つけることがポイントではありますが、見たいものは凹凸の小さい平らな面であることが分かっているという前提があります。

 

例えば顆粒(細かい粉末を固めて大きくした粒子の塊)状のセラミック原料粉末を観察する場合はどうでしょうか。左の 写真にもあるように一見大きい粒子しかないように見えますが、写真の丁度真ん中を更に20倍大きく拡大すると右の写真になり、大きな粒子は小さな粒子の集合体であることが分かります。顆粒というものはこういうものだという事が視覚的にも理解できます。

この写真を撮る前に、顆粒の粒径が100um程度だろうと想定していました。その粒子を構成する細かい粉末は1um程度と情報がありました。事前に持っていた、あるいは想定していた情報をもとに、どの程度の倍率で見るべきか、ある程度想像が出来た上で観察をしています。例がセラミック関係ですので、他の分野の方は自身が見るものがどういう物かイメージすると良いです。

 

SEM写真2  SEM写真1

 

逆に何も知らないサンプルを渡されて「SEM観察してください」と言われたらどうでしょうか?。恐らくSEMを使ったことがあれば、何を見るのか、何を知りたいのか、それはどの位のサイズなのか等、依頼した人に質問すると思います。そのような情報があって初めて倍率やワーキングディスタンス、加速電圧の設定、組成像観察等様々なアプローチやテクニックを駆使するはずです。

 

心眼でみるというのは、つまりイメージを持つことです。どんなモノがあるのか、そのイメージを持たずしてSEM観察は非常に難しい。「観察しているサンプルはきっと球のように丸いだろう」「細長いもの」「角ばったもの」などイメージを膨らませて、そのイメージ向かって画像・画質を調整する。本当は球のように丸いモノがあるのに、細長いものが見えてしまったら、それが本当かどうか疑う必要すらあります。
事実この例を見るまでは、大きい顆粒は真円に近い球体を想像してましたが、観察するとリンゴのような形の粒子もありました。この形は狙ったのかそれとも意図せずこの形になったのか、確かめるきっかけになりました。

モノが見えないのではなく、見たいものが判らないだけ。

「イメージできない事はマネージできない」、「想像できないものは、実現できない」という事を聞いたことがある方も多いと思います。私もうろ覚えで記憶しているもので、ドラッガーの「”You can’t manege what you can’t measure”」が原点っぽいのですが、確認できていません。出典はどうであれ、SEM観察も同様で、見たいものが判らないとSEMはとたんに難しくなります。

 

SEMを見るときは「対象」について、出来るだけ多くの情報を集めること。予期せぬ不良に対しての解析の場合なら、どんな不良の可能性があるかを予想しながら見る。例えば、TECDIAでは薄膜基板回路を作っていますが、そこで機能不全を起こしたサンプルを見る時、配線に電気が流れないような状況なら、Voidを中心に探すのか、クラックを見つけるか。或いは配線がショートした場合は、配線間にゴミが付着しているとか、あるいはショートによって燃えた部分があるから、その形跡を見つけるなど、イメージを膨らませてSEM観察すること時間の大きな短縮にもつながります。

Air bridge

 

SEMが上手い・下手には色々理由がありますが、見たいものがどんなものであるか、イメージを持っている・持ってない事が実は大きな違いを生んでいます。SEM観察には「心眼」という想像力がとても大事な要素です。

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