3Hって何?

ついつい出てしまう私の「職業病」

ついつい出てしまう私の「職業病」
どんな職種でも必死になって習得した技術や経験は、自分でも気が付かない内にそれが
普通になる一方、時には人より強いこだわりを感じる事も。俗にいう「職業病」。
私の場合は工業製品の精度や外観について、過度に反応してしまいます。
今回は私にとって良い意味での「職業病」についてのお話です。

自動車の外装修理の一つに「デントリペア」という方法があるのをご存じでしょうか?

金属ボディの凹みや歪み部分を絞り、元の形状に復元させる修理方法だそうです。

私はこと車に関しては大好きで、綺麗に保ちたい気持ちが高すぎて、言わば神経質…。

そんなに傷凹みが気になるなら床の間に飾っておけば?と自分でも問いたいほど…。

そんな我が愛車にも凹みが出来てしまい、デントリペアの職人さんに修理をしてもらう

機会がありました。

 

今回は事前に修理してもらいたい凹みに自分でマークを付けてから依頼したのですが、

どうやら普通の人は気にもしない(見つけられない)凹みだったらしく、

「普通、素人じゃこんな凹み見つけられないよ…。あんた業界人?」と言われる始末…。

 

そうなんです。業種は違えど、これは私の「職業病」だと思うのです。

 

テクダイヤで過去扱っていた製品の中に、削り出し加工で仕上り平面度10μm指示などが

求められている製品がありました。

多くの注文をいただき、当時はほぼ毎日製作していたのですが、金属加工は加工応力により

どうしても「反り・歪み」が発生します。厚板の場合は研磨加工で平面を出せるのですが、

それらの製品は薄板、そして形状的に「目利き」と「手」での修正が必要でした。

先ずは歪みの状態を目利きで判断した上で、樹脂ハンマーで叩いたり、バイスに固定して

捻じったり、頑固な歪みにはハンドプレス機などを用いたりして、その求められる平面度

10μmに収めるため奮闘していました。

 

これが最初は本当に難しくて、こっちを叩けばあっちが狂ったり、全然変化がないから

調子に乗って強く叩けば「への字」に曲がったり…。しかも、形状も材質も一品一様。

金属の材種によっても特性が異なり、毎日金属と通じない会話をしていた感じです。

そんな作業を毎日毎日何年も経験したおかげで、上手く会話が出来るまでになった反面、

気が付けばどんなものでも歪みやズレ、凹みなどが異常に気になる「目」になっていました。

 

既にそれらの製品は廃盤となって長らく携わっていないですが、精密加工製品の傷や歪み、

ダイヤモンド製品の傷やクラックの確認などに、この良い意味で「職業病」とも言える

鍛えられた「目」は活かされています。

そんなこともあり「テクダイヤの製品は精度高く美しい」と感じていただけたら最高です。

 

話は戻り、我が愛車のデントリペア。

作業を見ていると、凹みとその周辺の状況見ながら専用工具をボディの裏から凹みに

アクセスして、小刻みに押し出す様な感じで、本当にものの数分で元通りに…。

凄いですねこの技術…。

聞けば、「故意に凹ませて修理」を何度も繰り返し技術を習得されたのだとか。

このデントリペアも、職人さんが金属と会話をしながら作業しているように見えて、

ふと苦労した懐かしい日々を思い出しながら眺めていました。

一生懸命必死に習得した技術や経験は、時間が経っても色褪せませんね。