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半導体後工程の歴史を振り返って

半導体後工程の歴史を振り返って
半導体製造設備の設計に携わってきましたが、1980年頃を振り返ってコメントします。

半導体製造工程の「後工程」と呼ばれる組立工程では、ウェーハから半導体を切り出し、所定の位置に固定・封入して検査を行います。

ここでは、リード切断・成形前の封止工程について経験してきた内容に触れていきます。

封止工程とは、パッケージングを意味して、回路が構成されたチップを保護する目的であり、ポッティング方式、気密(セラミック)封止、プラスティック封止などがあげられます。 量産性や経済性を考慮したプラスティック封止の方式が主流を占め、その製造工程では、トランスファーモールド方式を使っていましたので、この部分でいろいろと工夫されていたことを少し記載してみます。

短冊上に配置されたリードフレームにチップをダイボンディングし、インナーリードとアウターリードをワイヤボンディングしてあるのですが、このままですとマザーボード等への実装困難なため、あらかじめ標準化されたサイズにパッケージ化します。

ここで、使用されるのがトランスファーモールド金型となります。 

また、使用される樹脂は、粘度調整のためのフィラを含んだエポキシ樹脂です。
エポキシ樹脂は、熱硬化性樹脂であり一定温度(180℃程度)で一度溶融し、必要時間で硬化すると、再加熱しても溶け出しません。この性質を使って金型内のパッケージサイズに彫り込まれたキャビティーという部分に樹脂を流し込みます。 

使用する金型は、トランスファーモールドプレスのレイアウトに入る最大数を製品配置するため、製品取り数はパッケージサイズで異なり50pcs1,000pcsとなりますが、多数個取りの場合、ボイドや未充填の無い同じ製品品質を確保することが難しくなります。 

そこで、樹脂の流れるルートとなるランナーを傾斜にしたり、製品入口となるゲートに角度をつけ、可能な限り同時充填ができるように工夫します。
理想的には、樹脂の粘度が最小の時に製品の形成ができることなのですが、溶融樹脂は、時間とその間に受ける熱で状態が変わってきます。そこで、実験モデルを作って樹脂特性を評価して金型設計に生かしてきました。
これにより、ワイヤー断線や耐湿性不良の発生を減らすことができました。 

他に、パッケージ(製品)として工夫された内容としては、表面の梨地化です。
初期の製品では、鏡面仕様のものでしたが、金型みがき工数の削減や製品表面の色むらなどの防止から、梨地化に変わってきました。
金型製作も放電加工による一体構造化ができ、コスト削減に寄与しました。製品コーナーの
R付けもコーナーへの樹脂未充填に効果がありました。 コーナーのR付けは、金型からの製品の離型性にも効果があります。 

一般的に、金型で悩まされるのが、離型性です。
金型にエジェクタピンを設置して、製品取り出しするのですが、側面に傷がついたり金型からうまく剥がれない現象が発生することがあります。パッケージ(製品)面からは、コーナーのR付けやわずかな抜きテーパの設置、表面の梨地化も表面張力影響を避けるため効果がありました。また、金型表面へのコーティングですが、当時は硬質Crめっきが薄膜で耐久性もあり主流でした。現在は、いろいろな処理がありますが、耐熱温度、処理温度、膜厚等十分に注意する必要があります。 

トランスファーモールド方式では、材料を1ケ所から供給するもの(シングルポット方式)ですが、複数の材料を使用できるマルチポットによるフルオートの自動機に変わってきたのが1990年頃でした。この方式ですと、製品の品質バラツキ要素が低減できるのです。

また、製品面からもパッケージの多様化が進みました。BGA(ボールグリッドアレー)では、一括モールドで、その後ガラエポ基板と一緒に切断して自由なサイズで製品化することで、金型種類を多く持たずに済むものも、出てきています。 

過去を振り返ると、製品の実現のためにパッケージの開発と製造設備の協業ができて幸せな時代でした。今の担当業務は異なりますが、今後も使用目的を理解しながら適切な提案ができる資質を持ち、市況のトルネードに入り込めるように心がけたいです。