3Hって何?

ダイヤモンドの年輪

ダイヤモンドの年輪
ダイヤモンドには年輪が刻まれています。ただし肉眼では見えません。
もう少し正確に表現すれば「天然」ダイヤモンドには結晶成長の模様が刻まれていて、特殊な方法で見ることができます。

天然のダイヤモンドが生まれるのは、地表から100km以上も深いマントルの中。

いま世界中で噴火している火山のマグマはせいぜい10kmから20kmの深さしかないので、ダイヤモンドを火山の近くや溶岩を探しても見つけることはできません。何億年も前の地殻の活動で、何かの拍子にものすごい勢いでマントルが吹き上がり、地表付近で固まってできた岩石の中にダイヤモンド原石は見つかります。

ダイヤモンドはマントル中、比較的炭素濃度の高い場所で生まれ、不純物を巻き込みながら成長します。ある程度成長すると、今度は原石周辺の炭素濃度は低くなり、結晶の成長速度は遅くなります。成長スピードが遅くなると不純物をあまり巻き込まなくなります。

そしてマントルは動いていますので、ダイヤモンドも同じところにずっと留まっていません。
炭素濃度の低いところから濃いところへ移動すると、周囲の炭素を吸い取るように成長を再開します。また、成長するだけでなく、マントル中では溶解作用により侵食をうけることもあります。

こうして、グワッと成長する、ゆっくり成長する、溶ける、そしてまた成長する、を繰り返し複雑な結晶構造を織りなしていきます。

このダイヤモンド内部に刻まれた結晶成長の痕跡ですが、紫外線やカソードルミネッセンスという特殊な電子線を当てて観測することが可能です。

今回ご紹介するのはそれとは違い、表面の微妙な凸凹を観測する干渉顕微鏡による写真です。
ダイヤモンドは社員が持っていた婚約指輪。テクダイヤ社内で研磨されたものではなく、一般的な市販のダイヤモンドです。

小学生の時、理科の実験で塩の結晶を作ったことがあるかもしれませんが、あれと同じように天然のダイヤモンドも面で結晶成長します。
写真で四角い模様が見えますが、幅の薄い赤や緑の層がいわゆる結晶成長スピードが遅く不純物の少ないところ。青いところは成長スピードが早い部分で層が厚くなっています。

ダイヤモンドは不純物が少ないと固く、不純物(その多くは窒素)が多いと柔らかくなります。
ダイヤモンドの研磨は一般的に、ダイヤモンドのパウダーを塗った鉄製の円盤を高速回転させ、そこに原石を押し付けて研磨をしますが、柔らかい部分は凹み、
硬い部分が高く残ってしまいます。

しかし、高い低いといっても、高低差40ナノメートルほど。1ナノメートルは1/1000ミクロンで1ミクロンが1/1000ミリですから、40ナノメートルはmmで表現すると0.00004mm。
肉眼でこれだけの起伏は確認することは不可能です。いや、肉眼どころか触ってもわかりません。

半導体の基板であればここから更に化学的な処理で限りなくフラットにしますが、宝飾の世界では必要ないのでそこまではしません。

写真中央から右方向に四角形が崩れたようになっていて侵食を受けたことがわかります。溶解は角から始まるので、条件によってはダイヤモンドは丸くなるわけですが、この原石は、さらに外側に向かって四角形で成長しているので、非常に形の良い原石だったことがわかります。

あと、この写真でわかるのは、研磨の方向です。
なんとなく水平方向に青く太い帯が何本か見えませんか?ダイヤモンドは結晶の向きによって研磨がしやすい方向、しにくい方向がかなり出ます。
この写真の場合、四角い模様の対角線方向が、研磨が容易な方向なのでセオリー通りの正しい方向で研磨されていることがわかります。

ダイヤモンドは非常に硬い素材ですが、硬すぎて粘りが無く、非常に割れやすいという性質を持ちます。
それでも天然ダイヤは人工ダイヤに比べて、内部構造がこのように複雑な層構造を持つため、ショックを吸収するかのように割れに対して強い、という意見もあります。

近年、天然ダイヤモンドが児童労働やテロ活動資金源になるという問題が取り沙汰されているのと同時に、人工ダイヤモンドの合成技術が上がり、天然ダイヤの流通はだんだんと落ちています。

人類の宇宙旅行が実現しそうなこの時代に、地下は12kmほどしか掘削できません。
しかし、宇宙の隕石はなかなか手に入らないのに、人類が絶対到達できない地下数百キロで生まれた何億年か前のダイヤモンドが手に入れることができるなんて、とても素敵な話だと思います。

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