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OC曲線の見方・Excelを用いた作図 ~抜取検査における抜取数とその効果~

OC曲線の見方・Excelを用いた作図 ~抜取検査における抜取数とその効果~
OC曲線の見方とExcelを用いたQC曲線の作図の方法をご紹介します。これを使用すると抜取検査における抜取数の効果がグラフィカルに分かりやすくなります。

OC曲線とは

抜取検査は原理上、一定の割合で次のような誤判定が発生します。
・ロットに含まれる不良品の率は許容範囲内だが合格と判定される。
・ロットの不良率は許容範囲を超えているが不合格と判定される。
同じロットを検査したとしても、サンプル抜取のバラツキによって合否が別れることがあるわけです。

では実際、合格(また不合格)と判定される確率はどのくらいなのでしょうか?
それを見やすく示すグラフがOC曲線です。

OC曲線の見方

OC曲線は縦軸がそのロットが抜取検査で合格する確率、横軸がそのロットに含まれる不良品の割合となっています。
この曲線はロットが含んでいるNG品の割合が〇%の時、ロットがNGと判定される確率を表しています。

例えば、抜取数200個、合格判定個数2個の場合、OC曲線は以下の様になり、次のことが分かります。
ロットが2.0%のNG品を含んでいる場合、ロットが合格になる確率は24%
ロットが0.5%のNG品を含んでいる場合、ロットが合格になる確率は92%



OC曲線の形は以下の2つ要素で変わります。
・抜取数(ロットあたり何個検査するのか)
・合格判定個数(許されるNG品の個数の上限。抜取ったサンプルの内、NGが何個までならそのロットを合格とするか)

たとえ抜取数に対する合格判定個数の比率が同じでも、
抜取数を減らすと不適合品率の高いロットが偶然合格する可能性は高くなる傾向があります。
上に載せた抜取200個、合格判定個数2個のOC曲線を抜取数を例にして、合格判定個数の比率を維持したまま抜取数を半分に減らした場合と、3倍に増やした場合を考えてみます。
抜取数に対する合格判定個数は1%ですが、抜取数が少ないほど、誤判定する確率が高くなることが判ります。

OC曲線の活用方法

OC曲線を使うと合格させたくない品質のロットと合格させたい品質のロットから、見合った抜取検査方式を見つけることができます。
例えば、以下のような場合、
・不適合品率0.5%のロット⇒なるべく合格させたい。具体的には95%以上の確率で合格させたい。
・不適合品率2.0%のロット⇒なるべく合格させたくない。具体的には合格する確率を10%以下にしたい。
上の3つのグラフをみると
①抜取100個, 合格判定個数1個:不適合品率0.5%のロットの合格率は95%より低い。不適合品率2.0%のロットの合格率は10%を上回っている。不適切。
②抜取200個, 合格判定個数2個:不適合品率0.5%のロットの合格率は95%より低い。不適合品率2.0%のロットの合格率は10%を上回っている。不適切。
③抜取600個, 合格判定個数6個:不適合品率0.5%のロットの合格率は95%以上。不適合品率2.0%のロットの合格率は10%以下。十分に精度がある。
となっています。②と③の間ぐらいを詰めていくことで、最適な抜取方式を見つけられます。(この例では抜取400個, 合格判定個数4個でほぼ要求を満たします。)

Excelを用いたOC曲線の書き方

Excelを用いてOC曲線を描く場合は以下のBINOM.DIST関数を使います。
=BINOM.DIST(合格判定個数,抜取数,不適合品率,関数形式)
・合格判定個数
抜取ったサンプルの内、不適合品の個数が何個までならそのロットを合格とするか。
例えば、あるロットから20個抜取ってNGが3個までならそのロットを合格とする場合は、3。
直接数値を打ち込んでもいいし、上の例の様にセルで指定してもいい。
(Excelの関数の説明文では「成功数」となっているがOC曲線を書くときは「不適合品を引き当てる=成功」というイメージ)
・抜取数
何個抜取って検査するか。
例えば、あるロットから20個抜取って検査する場合は、20。
(Excelの関数の説明文では「試行回数」となっている)
・不適合品率
ロットが含んでいるNG品の割合。
直接打ち込む場合は小数点で表して入力する。1% = 0.01。
(Excelの関数の説明文では「成功率」となっているがOC曲線を書く時は「不適合品を引き当てる=成功」、「成功率=不適合を引き当てる率=不適合品率」というイメージ)
・関数形式
OC曲線を書く場合はTRUEと入力します。(小文字でも大文字でも可)
この関数の関数形式はTRUEかFALSEで指定します。
TRUEにしておくと、指定した合格判定個数までの累積確率を計算してくれます。
例えば、合格判定個数を3個に設定した場合、NGが0~3個になる確率を計算してくれます。
FALSEにしておくと、指定した合格判定個数の場合のみの確率を計算してくれます。
例えば、合格判定個数を3個に設定した場合、NGが3個になる確率だけを計算してくれます。
NGが0個、1個、2個の場合の確率は合算されません。
OC曲線を書く場合は、抜取検査で合格判定個数が3個の場合、NGが0~3個なら合格と判定したいので、TRUEを指定します。

入力例


グラフ作成例

Let's try!

普段何気なくAQLの抜取/判定方式も適用されている方は是非一度計算OC曲線を書いてみてはいかがでしょうか。
思っていたより高い不適合品率のロットが割と高い可能性で合格となることに驚かされるかもしれません。